視覚は近くにおいて最も脳に影響力があるもので、視覚のみに重点を置いた芸術作品は多くあります。しかし、ビジュアルアートに音が加わるだけで、その魅力は格段に引き上げられ、より人間の脳にインパクトを与えるようになります。
具体的には、ビジュアルアートにおいてサウンドデザインは以下のような働きをしています。
視覚に現実味を加える
映画やゲームなどにおいて、サウンドデザインは映像に現実味を加え、より私たちをビジュアルアートに世界に引き込むことができます。
森のシーンであれば葉が揺れる音や風が通り抜ける音、ゲームであれば主人公が転落した時の音や攻撃をした時の音など、シーンにあった音声を加えることで、よりその映像がリアルなものとして私たちの知覚に伝えられます。
そのため、より私たちは場面をイメージしやすくなり、よりアートの世界にのめりこむことができるのです。一瞬の小さな音であっても映像に臨場感を与えることができるため、映画やゲームにおいてサウンドは非常に重要な役割を果たしています。同時に、場面に適さないサウンドは、映像を台無しにしてしまうこともあります。
ムードを加える
サウンドデザインは、ビジュアルアートにムードを加えることができます。
例えば、映画を見ているときに曲が挿入されていることがほとんどです。ロマンチックな恋愛映画であればスローテンポの曲、ホラー映画であれば最初はゆっくりで徐々にテンポが速くなる曲などをBGMを採用します。
このようにすることで、見ている人はより感傷的になったり、ハラハラしたりなど、映画のそれぞれのシーンに合わせてムードを作ることができるのです。また、サウンドデザインによってムードを作ることで、より映画の中の人物に感情移入ができるようになります。
美術館においても、よりその作品が描かれた時代背景などを再現するために、BGMが用いられているところもあります。
ストーリーを理解させる
映画において、サウンドは映画のストーリーを解釈するのに役立ちます。効果音によって視聴者は何が起こったのかを理解することができます。時には効果音で視聴者の想像力を膨らませ、ストーリーを自由に解釈することすら可能にしています。音がないと、ストーリーがどこか味気ないものになってしまったり、展開がスムーズにいかないことがあります。
実際に映画が製作されると時は特定の効果音を用いることによって、ストーリー性を持たせるように細かく計算されているのです。
記憶に残る
私たちの記憶は様々な知覚によって定着させられます。例えば、具体的な視覚のイメージが浮かばないものの、あるサウンドを聞いたときに懐かしい気持ちになったり、特定のシーンが頭にさえぎることがあります。これは私たちが音によって、特定のシーンを記憶しているためです。私たちが音楽を聴いた際、脳内では聴覚が刺激されるだけではなく、記憶を司る部位である「海馬」にも多くの刺激が与えられるためです。このようにサウンドは、人間の記憶を大きく助けているのです。
そのため、絵画や映画、ゲームなどいかなるビジュアルアートにおいても、それらにサウンドを加えることによって、より私たちの記憶に焼き付けることができます。
そのため、テレビのコマーシャルにおいても単に映像を流すだけではなく、BGMや効果音を用いることによって私たちの記憶に定着させ、プロモーションを行っているのです。
さらに、サウンドは感情すら記憶させることができます。そのため、映画や美術品を見た際に感じた感情をいつまでも残すことを可能にさせ、作品に触れたときに印象を強く維持することができるのです。